[第2特集]やまぐち回帰人名録 エピソード2:城下町 萩に笑顔をはこぶ人力車 萩市在住  中原省吾(なかはら しょうご)(47)さん

江戸時代、城下町として栄えた萩。
当時の武家屋敷や町家がそのまま残るこの町に、今から23年前、すてきな笑顔と信念を持つ男性が人力車を引いてやって来ました。

人力車で千葉から萩へ

 萩市南古萩(みなみふるはぎ)町の静かな通りに『俥宿(くるまやど)』と書かれた看板がある。中原さん夫婦が営むギャラリー&喫茶『俥宿天十平(てんじゅっぺい)』だ。門をくぐると、美しく手入れされた庭が広がっている。築150年という民家の母屋は萩焼やアジアの工芸品を展示・販売するギャラリー、大正時代に増築された洋館部分はカフェとして利用している。
 省吾さんは千葉県の出身。20歳の頃、徒歩で日本を1周することを決意し、半年かけて約7700キロを踏破したという強靱な体力と行動力の持ち主だ。昔から骨董品に興味があったという省吾さん。「日本1周をしたときに出会った友人の勧めもあって、萩に来て人力車を引こうと思い付きました。24歳の頃、千葉で人力車を手に入れて、萩まで引っ張ってきたんです」。
 そんな彼を支えるのは、萩で生まれ育った妻の万里(まり)さんだ。結婚するまでは、地元新聞社の記者として活躍していた。
「当時は『いい萩つくろう会』という町づくりに関する集まりなどで顔を見かける程度。彼が人力車を引いていることは知っていました。お客さんがいない日も、真冬の寒い日も、必ず街角に立っているんです。あの根性はすごいなと感心していました」最初は友達として付き合い始めたが、交際を重ねるうちに「生きる上で必要な強さを感じ、彼となら無人島に流されてもやっていけると確信しました」という万里さん。約半年という短い交際期間を経て2人はゴールインした。

中原さんが営むギャラリー&喫茶「俥宿天十平」の写真

中原さんが営むギャラリー&喫茶「俥宿天十平」

全国から選んだ器や工芸品などを販売している店内の写真

店内では全国から選んだ器や工芸品などを販売

 

地域との交流

 結婚・子育てを機に、町内会の行事や小学校のPTA役員、萩の堀内・平安古地区の伝統的建造物群保存地区見直し調査委員会の委員を務めるなど、次第に地域との関わりを持つようになる。
「夫は納得できないことなどがあると、すぐ口にするたちなんです。他人との意見の相違を恐れないんですね。私は内心ドキドキしていました」と万里さん。省吾さんの妥協のない姿勢が、周囲を動かして、地域の活性化につながっているようだ。さらに、多くの人にこの町の魅力を伝えていきたいという思いから、地域の仲間と『城下町盛り上げ隊』を結成。地元の店などを紹介するマップ作りに取り組んでいる。また、江戸時代の装いで萩を歩く『江戸に遊ぶ』というイベントも数人で企画。萩の町をもっと面白くしたいと日々奔走している。

夢の実現に向けて

 現在、日本で人力車を引く人の中でも、1番長いキャリアを持つ省吾さん。自ら作ったという待合い場『人力車立場』で、毎日営業をしている。さらに、人力車好きが高じて、人力車の製作にも取り組み、ゆくゆくは人力車の博物館を作りたいという夢がある。そこで、実際に人力車を引いていた人や作っていた人、博物館の学芸員などと交流して、人力車に関する資料を全国から収集。昨年は『人力車セミナー』を企画したり、現地に出掛けて若手にレクチャーしたり、人力車を通じて全国に新しい仲間も増えている。
「1番楽しいのは、人力車の新たな魅力、萩の新たな魅力を発見したとき」と省吾さん。人力車を引くことで、改めて萩の魅力を感じるのだとか。
「気になるのは人力車を降りたあとのお客さんの予定。これからどこに行くのかなって。人力車をただの移動手段としてではなく、旅や地域の一部として考えると、もっといろいろなサービスができると思うんです。昔の人力車は、芸者さんの帯や贈り物を運んだりと、雑用も多かったんですよ。これからは、旅館やお店の人ともっとコミュニケーションを取って、萩を訪れる人々に新しいサービスを提供できたらいいなと思っています」
 今ではすっかり萩の顔として知られる省吾さん。万里さんと3人のお子さんに支えられ、今日も額に汗しながら、笑顔をはこんで軽快に走っている。

いつも笑顔が絶えない省吾さんと妻の万里さんの写真

いつも笑顔が絶えない省吾さんと妻の万里さん

江戸屋横丁にて額に汗しながら人力車を引く省吾さんの写真

額に汗しながら人力車を引く省吾さん。江戸屋横丁にて

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俥宿天十平〉萩市南古萩町33-5 TEL 0838-26-6474

 

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