銘酒造りに匠の情熱が結集
「酒造りの決め手は米。栽培と製造がうまく連携しないと良いお酒はできない」と語るのは当時、県産業技術センターで食品技術部長としてプロジェクトに携わった柏木享(かしわぎ とおる)さん。
「どういう米が栽培しやすいかは分かるが、実際にお酒に向いているかどうかは農業試験場では分からない。産業技術センターと共通認識を持って開発できたことが成功への近道でした。」と県農業試験場の専門研究員、羽嶋正恭(はじま まさやす)さんも当時を振り返る。

【左】柏木享(かしわぎ とおる)さん
【右】羽嶋正恭(はじま まさやす)さん
酒米の新品種開発のきっかけは、明治中期に山口県の農家が作った『穀良都(こくりょうみやこ)』。昭和天皇即位の際には、献穀米にもなったほどの由緒正しい米で、食用としてだけでなく、酒造りにも適する米として、西日本を中心に大量に栽培されていました。昭和初期に出版された酒造解説書『清酒製造精義』によると『山田穂(やまだほ)』(『山田錦(やまだにしき)』の片親)や『亀の尾』など、名だたる米と同様に評価されていたことが分かりました。しかし、稲の背丈が1メートルを超えるため、倒れやすく収穫量の少ない穀良都は、安定した供給ができず、次第に栽培農家が減っていき、幻の米と呼ばれるようになりました。
そこで背が高く倒れやすいという穀良都の弱点を克服し、品質や収穫量の優れた品種を開発するため、平成9年に県農業試験場が穀良都と、山田錦を片親とする短い丈の『西海(さいかい)222号』を交配しました。さらに、こうした取り組みを県独自の酒造りに生かすため、平成13年には県産業技術センターとプロジェクトチームを結成。酒造りに適した新品種の共同開発が始まりました。試験醸造や現地栽培試験を経て、平成15年に『西都の雫』が完成しました。
苦労の末に完成した西都の雫で造られた新酒は、平成18年4月以降県内13社から発売。銘柄は酒造場によって異なるものの、全て西都の雫を使用している証のプレート付き。そのうちの1つは、平成18年全国新酒鑑評会で金賞を受賞しました。

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