厚生科学研究(子ども家庭総合研究事業)
新生児期の効果的な聴覚スクリーニング方法と療育体制に関する研究(平成10〜12年度) |
| 1. |
新生児期の効果的な聴覚スクリーニング方法の検討 |
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(1) |
新生児期の効果的な聴覚スクリーニング方法について検討するために、初年度に作成したプロトコールに従って、全国の17施設において平成12年12月までに、自動聴性脳幹反応(自動ABR)を用いて、出生病院入院中に17,499名に対して聴覚スクリーニングを実施した結果、64例(0.37%)の要検査例から両側聴覚障害13例(0.07%)、片側聴覚障害13例(0.07%)を発見した。検査の感度は100%、特異度は99.2%であった。 |
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(2) |
また、第2,3年度には耳音響放射(TEOAE及びDPOAE)による新生児聴覚検査についても検討した結果、TEOAE及びDPOAEの要再検率は自動ABRの要再検率を大きく上回った。OAEを新生児聴覚スクリーナーとして使用しても何らかの確認検査を行えばスクリーニングシステム全体としての制度に問題はないと考えられるが、OAEを用いた大規模スクリーニングでは、高い要再検率に起因する諸問題に適切な配慮が必要であると考えられた。 |
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TEOAE:571例に実施、要再検23例(4.0%)、両側聴覚障害1例(0.18%)、片側聴覚障害1例(0.18%) |
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DPOAE:410例に実施、要再検25例(6.1%)、両側聴覚障害1例(0.18%)、片側聴覚障害1例(0.18%) |
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(3) |
3か月児健康診査に対して、新生児と同様にTEOAEを行い、聴覚スクリーニングの実施時期についての検討を行った。その結果、TEOAEは3か月児健診の会場でも実施可能であり、居住地域が限られるため、耳鼻咽喉科との連携が取りやすいという利点があるので、乳児健診の聴覚スクリーニングとして導入を検討する意義があると思われた。 |
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(4) |
新生児聴覚スクリーニングの感度を求めるために、プロトコールによる聴覚スクリーニング症例の1歳6か月時の予後調査を実施した結果、中耳炎以外に新たな聴覚障害は認めず、現時点でのスクリーニングの感度は100%であった。 |
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(5) |
今後、聴覚スクリーニングを全国に広げる際の問題点は、以下のとおり。 |
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自動ABRは、脳波やABR検査の経験がない者が実施しても容易に行え、偽陽性率も低く、我が国で行う新生児聴覚スクリーニングに用いるのに有用である。 |
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我が国の分娩は小規模の施設で行われることが多いため、より安価な検査機器である耳音響放射法(OAE)も併用し、自動ABRと組み合わせてスクリーニングを行うことを検討する必要がある。 |
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スクリーニング陽性者が、もれなく精密検査を受けられる体制を作る必要がある。これにはマススクリーニング開始前に、地域におけるスクリーニング機関と診断機関、行政との連携体制を図る必要がある。 |
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スクリーニングから、診断、療育へとスムーズに児を受け入れるために、スクリーニング機関、診断機関、療育機関、行政機関、聴覚障害者団体などの代表、言語聴覚士、ケースワーカー、カウンセラーなどで構成する協議会設置が必要である。 |
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聴覚障害乳児の療育体制の現状は不十分である。人材養成、施設整備を含め、療育体制の整備が急務である。 |
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スクリーニングの効果を判定するためには、登録・追跡システムが必要である。個人情報の保護に留意し、保護者の同意を得て、登録・追跡システムを構築する。 |
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聴覚障害乳児の家族支援体制を作る必要がある。 |
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新生児聴覚スクリーニングに関する母親の認知度は現時点で高いとはいえないので、母児関係確立に十分配慮した上で、その重要性、必要性を周知する必要があると考えられる。 |
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| 2. |
新生児聴覚スクリーニングの経済評価に関する検討 |
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(1) |
新生児聴覚スクリーニングの根拠については、「不十分」という結果から、「相当な根拠が認められる」という結果に変化してきている。ただし、この評価は必ずしも充分なものではないため、導入に際しては慎重な判断が求められ、継続して評価を進めることが求められる。 |
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(2) |
本スクリーニングに用いることが予想される自動ABRでは、医療従事者の時間費用は受検者一人当たり672円と推定された。このうち、医師と検査技師の費用が大半を占めており、医師の時間のほとんど説明に費やされていた。 |
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| 3. |
我が国における聴覚障害児の診断及び早期療育体制に関する検討 |
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(1) |
聴覚スクリーニングにより発見された聴覚障害児の療育体制整備のために、わがくににおける聴覚障害児の早期診断及び療育体制の現状の調査を行った。生後6か月以内の乳児の聴覚障害の診断が可能であると回答したのは170機関(本県では、ののはなクリニック、山口大学医学部附属病院耳鼻咽喉科)であったが、必要な検査法が充分に実施できるのはその約半数であり、1998年に生後6か月未満の聴覚障害児を1例以上診断したのは67機関であった。 |
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(2) |
また、1歳未満の難聴児の療育を行う療育機関は、通園施設及び病院が104施設、聾学校幼稚部が75校あった。104施設のうち、常勤の言語聴覚士がいる施設は63施設(59%)であった。難聴幼児通園施設の絶対数が少ない。また、聾学校は3歳以下の児に対しては、正式に定員を配置していない。今後、スクリーニングにより、療育開始年齢が下がり、1歳以下の児が増加することに対応した整備が急務である。 |
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| 4. |
聴覚障害児の療育の基本的な考え方 |
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(1) |
子どもに対して、聴力検査を繰り返し行い、聴覚障害の程度や型が確認又は推定でき次第、補聴器装用指導を始める。 |
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(2) |
親に対して、実践を通じて聴覚障害児の育て方、発達の見方を学んでもらうため、これに必要な講義を行い、これに併せて実践記録をつけてもらう。 |
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(3) |
新生児に聴覚障害が発見された場合、診断確定を待ち、定頚前後の生後3か月頃から装用準備を開始し、6か月頃までに装用することが望ましいとされている。それまでに母親は育児に馴れ、子への愛情が育っていることが必要で、そのための指導、支援に力を注ぐ必要があると考える。補聴器の選択調整に必要な手順としては、まず乳幼児聴力検査により、聴性行動反応の認められる最小反応値を確認し、機種の選択と調整、イヤモールドの作製、装用訓練、補聴器の扱い方などに関する母親指導などを日時をかけて行う。 |
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| 5. |
米国における新生児聴覚スクリーニング及び早期療育の現状の調査 |
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(1) |
1999年現在では22州にて全新生児の聴覚スクリーニングが実施されている(2000年には32州となった)。その他の州でも、病院ごとあるいはハイリスク児のみにスクリーニングが実施されており、全新生児の検査に向けた検討が行われているので、全新生児を対象とした難聴のユニバーサルスクリーニングはやがて合衆国全体に普及するものと推定される。多数のaudiologistの存在が検査を可能にしている。スクリーニングは出生病院中(生後24〜48時間)に行われており、OAE及び自動ABRが用いられていた。 |
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(2) |
audiologistが聴覚に異常があることを診断した後、耳鼻咽喉科医を受診させ、外科的な疾患を合併していないことの診断を受ける。外科的な異常のないことが診断された児は、audiologistにより補聴器の装着やフィッティング及びaudiologistやSpeech-language
pathologistにより児や家族への療育が開始される。 |
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(3) |
確定診断には、ABR、乳児行動聴覚評価、high-frequency
tympanometry、その他の特殊検査を実施し、聴覚異常を早期に発見し療育を開始していた。聴覚障害があることの告知はライセンスのあるaudiologistにより行われている。 |
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(4) |
異常児に対しては、audiologistの診断後はspeech
educatorがコーディネーターとなって、educator、audiologist、Speech-language pathologist、home
doctor、Department of Public Health、Department of Educationなどでチームを作り、診断や治療法、療育方法、家族への援助などを検討している。聴覚障害者、障害児を持つ家族も積極的に、新たに発見された障害児を持つ家族への援助に関わっている。 |
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(5) |
米国では新生児の入院期間が24〜48時間であるにも関わらず、入院期間中に新生児聴覚スクリーニングが実施されていた。我が国の産科医療機関の入院期間は4〜6日が多いので、スクリーニング実施に関しては有利である。しかし、米国は年間の出生数が2,000〜4,000以上の病院が多いのに反して、我が国は200以下の施設も多いため、高価なスクリーニング機器の購入にも問題が生じる。マススクリーニング実施時には、検査の供給体制についての検討が必要である。 |
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(6) |
我が国では、聴覚障害乳児の療育に当たるべき難聴幼児通園施設も全国に26か所のみであり、施設数が不足しており、また、聴覚障害乳児療育に経験豊富な指導員、言語聴覚士も不足している。聴覚障害乳児の療育施設の拡充及び聴覚障害乳児の療育に当たる人材の養成が急務である。また、欧米で行われているような家庭訪問による指導なども含めて、乳児の療育体制の検討も行う必要がある。 |