新生児聴覚検査とそのフォローアップ体制の確立に向けて

I 新生児聴覚検査の動向
   我が国の新生児聴覚検査の動向
    (1)  厚生省研究報告
       厚生省(現:厚生労働省)は、平成10〜12年度にかけて厚生科学研究(子ども家庭総合研究事業)において、「新生児期の効果的な聴覚スクリーニング方法と療育体制に関する研究」(主任研究者:三科 潤)を実施した。その結果の概要は、以下のとおりである。
 
厚生科学研究(子ども家庭総合研究事業)

新生児期の効果的な聴覚スクリーニング方法と療育体制に関する研究(平成10〜12年度)
1.  新生児期の効果的な聴覚スクリーニング方法の検討
(1)  新生児期の効果的な聴覚スクリーニング方法について検討するために、初年度に作成したプロトコールに従って、全国の17施設において平成12年12月までに、自動聴性脳幹反応(自動ABR)を用いて、出生病院入院中に17,499名に対して聴覚スクリーニングを実施した結果、64例(0.37%)の要検査例から両側聴覚障害13例(0.07%)、片側聴覚障害13例(0.07%)を発見した。検査の感度は100%、特異度は99.2%であった。
(2)  また、第2,3年度には耳音響放射(TEOAE及びDPOAE)による新生児聴覚検査についても検討した結果、TEOAE及びDPOAEの要再検率は自動ABRの要再検率を大きく上回った。OAEを新生児聴覚スクリーナーとして使用しても何らかの確認検査を行えばスクリーニングシステム全体としての制度に問題はないと考えられるが、OAEを用いた大規模スクリーニングでは、高い要再検率に起因する諸問題に適切な配慮が必要であると考えられた。
 TEOAE:571例に実施、要再検23例(4.0%)、両側聴覚障害1例(0.18%)、片側聴覚障害1例(0.18%)
 DPOAE:410例に実施、要再検25例(6.1%)、両側聴覚障害1例(0.18%)、片側聴覚障害1例(0.18%)
(3)  3か月児健康診査に対して、新生児と同様にTEOAEを行い、聴覚スクリーニングの実施時期についての検討を行った。その結果、TEOAEは3か月児健診の会場でも実施可能であり、居住地域が限られるため、耳鼻咽喉科との連携が取りやすいという利点があるので、乳児健診の聴覚スクリーニングとして導入を検討する意義があると思われた。
(4)  新生児聴覚スクリーニングの感度を求めるために、プロトコールによる聴覚スクリーニング症例の1歳6か月時の予後調査を実施した結果、中耳炎以外に新たな聴覚障害は認めず、現時点でのスクリーニングの感度は100%であった。
(5)  今後、聴覚スクリーニングを全国に広げる際の問題点は、以下のとおり。
 自動ABRは、脳波やABR検査の経験がない者が実施しても容易に行え、偽陽性率も低く、我が国で行う新生児聴覚スクリーニングに用いるのに有用である。
 我が国の分娩は小規模の施設で行われることが多いため、より安価な検査機器である耳音響放射法(OAE)も併用し、自動ABRと組み合わせてスクリーニングを行うことを検討する必要がある。
 スクリーニング陽性者が、もれなく精密検査を受けられる体制を作る必要がある。これにはマススクリーニング開始前に、地域におけるスクリーニング機関と診断機関、行政との連携体制を図る必要がある。
 スクリーニングから、診断、療育へとスムーズに児を受け入れるために、スクリーニング機関、診断機関、療育機関、行政機関、聴覚障害者団体などの代表、言語聴覚士、ケースワーカー、カウンセラーなどで構成する協議会設置が必要である。
 聴覚障害乳児の療育体制の現状は不十分である。人材養成、施設整備を含め、療育体制の整備が急務である。
 スクリーニングの効果を判定するためには、登録・追跡システムが必要である。個人情報の保護に留意し、保護者の同意を得て、登録・追跡システムを構築する。
 聴覚障害乳児の家族支援体制を作る必要がある。
 新生児聴覚スクリーニングに関する母親の認知度は現時点で高いとはいえないので、母児関係確立に十分配慮した上で、その重要性、必要性を周知する必要があると考えられる。
2.  新生児聴覚スクリーニングの経済評価に関する検討
(1)  新生児聴覚スクリーニングの根拠については、「不十分」という結果から、「相当な根拠が認められる」という結果に変化してきている。ただし、この評価は必ずしも充分なものではないため、導入に際しては慎重な判断が求められ、継続して評価を進めることが求められる。
(2)  本スクリーニングに用いることが予想される自動ABRでは、医療従事者の時間費用は受検者一人当たり672円と推定された。このうち、医師と検査技師の費用が大半を占めており、医師の時間のほとんど説明に費やされていた。
3.  我が国における聴覚障害児の診断及び早期療育体制に関する検討
(1)  聴覚スクリーニングにより発見された聴覚障害児の療育体制整備のために、わがくににおける聴覚障害児の早期診断及び療育体制の現状の調査を行った。生後6か月以内の乳児の聴覚障害の診断が可能であると回答したのは170機関(本県では、ののはなクリニック、山口大学医学部附属病院耳鼻咽喉科)であったが、必要な検査法が充分に実施できるのはその約半数であり、1998年に生後6か月未満の聴覚障害児を1例以上診断したのは67機関であった。
(2)  また、1歳未満の難聴児の療育を行う療育機関は、通園施設及び病院が104施設、聾学校幼稚部が75校あった。104施設のうち、常勤の言語聴覚士がいる施設は63施設(59%)であった。難聴幼児通園施設の絶対数が少ない。また、聾学校は3歳以下の児に対しては、正式に定員を配置していない。今後、スクリーニングにより、療育開始年齢が下がり、1歳以下の児が増加することに対応した整備が急務である。
4.  聴覚障害児の療育の基本的な考え方
(1)  子どもに対して、聴力検査を繰り返し行い、聴覚障害の程度や型が確認又は推定でき次第、補聴器装用指導を始める。
(2)  親に対して、実践を通じて聴覚障害児の育て方、発達の見方を学んでもらうため、これに必要な講義を行い、これに併せて実践記録をつけてもらう。
(3)  新生児に聴覚障害が発見された場合、診断確定を待ち、定頚前後の生後3か月頃から装用準備を開始し、6か月頃までに装用することが望ましいとされている。それまでに母親は育児に馴れ、子への愛情が育っていることが必要で、そのための指導、支援に力を注ぐ必要があると考える。補聴器の選択調整に必要な手順としては、まず乳幼児聴力検査により、聴性行動反応の認められる最小反応値を確認し、機種の選択と調整、イヤモールドの作製、装用訓練、補聴器の扱い方などに関する母親指導などを日時をかけて行う。
5.  米国における新生児聴覚スクリーニング及び早期療育の現状の調査
(1)  1999年現在では22州にて全新生児の聴覚スクリーニングが実施されている(2000年には32州となった)。その他の州でも、病院ごとあるいはハイリスク児のみにスクリーニングが実施されており、全新生児の検査に向けた検討が行われているので、全新生児を対象とした難聴のユニバーサルスクリーニングはやがて合衆国全体に普及するものと推定される。多数のaudiologistの存在が検査を可能にしている。スクリーニングは出生病院中(生後24〜48時間)に行われており、OAE及び自動ABRが用いられていた。
(2)  audiologistが聴覚に異常があることを診断した後、耳鼻咽喉科医を受診させ、外科的な疾患を合併していないことの診断を受ける。外科的な異常のないことが診断された児は、audiologistにより補聴器の装着やフィッティング及びaudiologistやSpeech-language pathologistにより児や家族への療育が開始される。
(3)  確定診断には、ABR、乳児行動聴覚評価、high-frequency tympanometry、その他の特殊検査を実施し、聴覚異常を早期に発見し療育を開始していた。聴覚障害があることの告知はライセンスのあるaudiologistにより行われている。
(4)  異常児に対しては、audiologistの診断後はspeech educatorがコーディネーターとなって、educator、audiologist、Speech-language pathologist、home doctor、Department of Public Health、Department of Educationなどでチームを作り、診断や治療法、療育方法、家族への援助などを検討している。聴覚障害者、障害児を持つ家族も積極的に、新たに発見された障害児を持つ家族への援助に関わっている。
(5)  米国では新生児の入院期間が24〜48時間であるにも関わらず、入院期間中に新生児聴覚スクリーニングが実施されていた。我が国の産科医療機関の入院期間は4〜6日が多いので、スクリーニング実施に関しては有利である。しかし、米国は年間の出生数が2,000〜4,000以上の病院が多いのに反して、我が国は200以下の施設も多いため、高価なスクリーニング機器の購入にも問題が生じる。マススクリーニング実施時には、検査の供給体制についての検討が必要である。
(6)  我が国では、聴覚障害乳児の療育に当たるべき難聴幼児通園施設も全国に26か所のみであり、施設数が不足しており、また、聴覚障害乳児療育に経験豊富な指導員、言語聴覚士も不足している。聴覚障害乳児の療育施設の拡充及び聴覚障害乳児の療育に当たる人材の養成が急務である。また、欧米で行われているような家庭訪問による指導なども含めて、乳児の療育体制の検討も行う必要がある。
 
 平成14年3月 厚生科学研究(子ども家庭総合研究事業)「全出生児を対象とした新生児聴覚スクリーニングの有効な方法及びフォローアップ、家庭支援に関する研究」班(主任研究者:三科 潤)においては、「新生聴覚検査事業の手引き」を作成した。
 この手引書は、新生児聴覚検査の体制が整っており、かつ聴覚検査で発見された児の精密検査及び難聴幼児通園施設、又は聾学校幼稚部など早期支援を行う機関との連携が可能な地域において、試行的に実施することにより、新生児聴覚検査の有効性を検討するとともに、将来、全国的なマススクリーニングとして新生児聴覚検査を実施する際に生じる可能性がある問題点をあわせて検討するために実施する「新生児聴覚検査試行的事業」を実施するための手引きである。
 
    (2)  新生児聴覚検査の内容
       (1)の研究成果を踏まえ、厚生省は平成12年10月に、「新生児聴覚検査事業実施要綱」を定め、聴覚障害の早期発見・早期療育を図るため、新生児に対する聴覚検査を医療機関に委託して試行的に実施することとした。新生児聴覚検査事業の概要は、以下のとおりである。
 
新生児聴覚検査事業の概要
 目的
 聴覚障害を早期に発見し、できるだけ早い段階で適切な措置を講じられるようにするため、新生児に対する聴覚検査を実施する。
 なお、本事業は、新生児に対する聴覚検査について、マス・スクリーニングに適した実施方法、実施体制等を検討するため、当面は、試行的に実施するものである。
 実施主体
 事業の実施主体は、都道府県及び指定都市とする。
 検査対象
 検査対象は、新生児とする。
 検査の実施等
(1)  検査は、検査体制が整備された適切な医療機関に委託して行う。
(2)  聴覚検査を行う医療機関(以下「検査機関」という。)においては、検査に必要となる検査機器が整備され、かつ、検査担当者が配置されているなど、適切な検査体制が整えられていることが必要である。
(3)  検査機関は、試行的な事業としての事業効果や効率性等を勘案すると、年間出生数が多い医療機関とすることが望ましいが、地域に該当する医療機関がないなどの場合には、それ以外の適切な小規模な医療機関に委託し実施しても差し支えない。
(4)  検査は、原則として、出生後入院中に行うこととし、自動聴性脳幹反応検査(AABR)又は耳音響放射検査(OAE)のいずれかの方法により実施する。
(5)  入院中に行った初回の検査において、異常又は異常の疑いがあると認められた場合には、退院前に確認検査を行う。
(6)  入院中に行った検査(確認検査を含む。)が耳音響放射検査(OAE)のみであり、かつ、検査の結果、異常又は異常の疑いがあると認められたケースについては、偽陽性率(正常者を異常と判断した率)を低くする等の観点から、退院後、精密検査を行う前に、自動聴性脳幹反応検査(AABR)又は聴性脳幹反応検査(ABR)による再検査を行うことが望ましく、これらの検査方法を実施できる検査機関を確保するよう努める。
(7)  検査の結果、異常又は異常の疑いがあると認められたケースについては、専門医療機関(耳鼻科を標榜する病院、診療所)において、精密検査を行う。
(8)  精密検査において異常があると認められたケースについては、療育を行うことが可能な施設・機関等において、補聴器の装用指導等の療育指導を実施する。
(9)  精密検査において異常があると認められたケースについては、当該乳児に対し適切な療育を提供できる施設・機関等において、直ちに療育が開始できるように努める。
 関係機関等の連携
(1)  実施主体においては、本事業を円滑に実施できるよう、関係機関、関係団体等との連携を図る。
(2)  実施主体は、検査の結果、異常又は異常の疑いがあると認められたケースについては、保護者等の同意を得て保健所、児童相談所等の関係機関や関係市区町村へ通知し、当該乳児やその保護者に対する指導・助言を行うなど、必要なフォローアップを講じる。
(3)  本事業においては、検査精度の維持向上を図ること、検査から療育へと遅滞なく円滑に引き継がれることが重要であることから、関係医師会(産婦人科、小児科、耳鼻科等)、医療機関、保健所、児童相談所、市区町村、難聴児に対する療育を行う機関・施設等、関係団体等から構成される協議会を開催するなどにより、関係機関、関係団体等との連携を図る。
 保護者等への周知
(1)  実施主体は、保護者、関係者等に対して、本事業の目的や検査方法等について、あらゆる機会を通じて周知に努める。特に、本事業は、当面は、試行的な事業として行われるものであり、事業の実施方法は確立されたものではないこと等について、保護者、関係者等に十分に理解させ、検査等を実施することについて、保護者の同意を得て行う。
(2)  検査機関から検査結果について保護者に対し説明させるとともに、実施主体に対して、検査結果を速やかに報告させる。
(3)  本事業は、当面は、試行的事業として行われるものであり、医療機関によっては検査を行っていないところがあること、行っている場合でも医療機関によって検査方法が異なることがあることや、検査方法等は将来的には変更する可能性があること等を説明し、保護者の同意を得て検査等を実施する。
(4)  保護者等に対し、それぞれの検査の段階で、検査の目的、内容等の正確で分かりやすい説明を行い、保護者等に誤解や過剰な不安感を与えないよう適切な助言・指導を行う。
(5)  市区町村が実施する妊産婦健康診査や出産前の両(母)親学級などの母子保健事業を活用するなどにより、住民に対する本事業についての普及啓発が十分に行われるよう、市区町村の協力を得るようにする。
(6)  関係医療機関に対して本事業の周知を図る。
(7)  検査結果等の個人情報保護に留意する。
 経費の補助
 本事業のうち、検査(精密検査を除く。)に要する費用については、実施主体の支弁とし、国は予算の範囲内において、別に定めるところにより補助する。
 事業結果の報告
(1)  実施主体は、事業の実施状況を逐次把握し、その結果を年度毎に取りまとめ、厚生省に報告する。
(2)  実施主体においては、逐次検査件数や検査結果等を把握するとともに、データの整理に努める。
 事業実施の協議
 本事業の実施を計画する際には、事前に厚生省に協議する。
(平成12年10月20日 厚生省児童家庭局長通知及び母子保健課長通知)
 
    (3)  他県の状況
       平成14年7月の福島県の調査によると、平成13年度から本事業を実施した都道府県は、秋田県、栃木県、神奈川県及び岡山県であり、それぞれの平成14年度実施規模、予算、実施方法は以下のとおりであった。
都道府県名 実施規模 予算 検査方法 委託医療機関数
秋田県 4,400人 26,179千円 AABR 9か所
栃木県 1,800人 10,080千円 AABR 2か所
神奈川県 650人程度 3,983千円 AABR 1か所
岡山県 15,800人 60,590千円 AABR 42か所
 代表的な例として、岡山県においては、平成13年7月に「岡山県新生児聴覚検査事業の手引き」を作成し、新生児聴覚検査を実施している。その概要は以下のとおりである。
 
岡山県新生児聴覚検査事業の概要
 新生児聴覚スクリーニングについて
(1)  実施機関
 産科医療機関(スクリーニング機関)で以下の条件を満たすものに県が委託して実施
 検査に必要となる検査機器(当面は自動ABR)が整備されていること
 検査担当者が配置されていること
(2)  保護者への説明と同意
 分娩入院時、分娩後の早い時期に、保護者に対して説明
 以下の条件を満たした新生児が対象
 スクリーニング機関で出生し、岡山県内に住所地を有すること
 保護者がスクリーニング検査を希望
 保護者が、[1]検査結果の県への報告、[2]「要再検」の場合の関係機関への通知、[3]追跡調査、の3点に文書により同意
(3)  実施方法
 分娩施設に入院中に、他覚的な検査機器を用いて実施
(注)  当面は自動ABRを用いるが、OAEによるスクリーニングは、当面、本事業の対象としないが、検査後の流れについては、手引きに準拠して行うことが望ましい。
(4)  実施時期
 原則として出産後数日の自然睡眠下に実施。 日齢2〜4日に初回検査を実施することが適当。NICUに入院しているなどの重症児は、全身状態を慎重に評価し、状態が落ち着き、コットに出てから退院までの間に実施。
(5)  検査担当者
 新生児についての一般的知識と新生児聴覚スクリーニングの意義について十分理解している者が望ましい。医師、助産婦、看護婦(士)、臨床検査技師が適任。
(6)  結果とその対応
 聴覚スクリーニングで「合格(pass)」の場合
 原則として聴覚に異常がないとして良いが、その後の聴覚の発達等に注意することを母親に十分説明しておく。
 聴覚スクリーニングで「要再検(refer)」の場合
 反応には不十分であるが、偽陽性のこともあり、聴覚障害があるか否かは現時点では不明であるので、再度、精密検査を受けることが必要であることを保護者に説明し、聴覚検査の結果と新生児の基本情報を紹介状に記載して、精密検査機関を紹介する。
(注)  OAEによる確認検査で「要再検」の場合、精密検査を実施する前に自動ABRまたはABRによる再検査を実施し、更に「要再検」の場合は、精密検査機関へ紹介。
 聴覚スクリーニングが実施できなかった場合
 保護者が聴覚検査に同意しなかった場合は、保護者が不同意を表明した記録を残す。保護者は聴覚スクリーニングを希望したが、入院中の検査がもれてしまった場合は、生後1か月までの間に、来院の上、聴覚スクリーニングを実施。
(7)  実績報告
 スクリーニング機関は、毎月文書により、聴覚スクリーニング方法と使用機器、聴覚スクリーニング実施数、初回検査での「要再検」者数、確認検査での「要再検」者数、確認検査での「要再検」の場合の紹介先、個別の検査結果、新生児情報等を県に報告。
(8)  費用の負担
 新生児聴覚スクリーニングに要する費用で、自動ABRを使うものに関しては、確認検査分を含め最大2回まで、公費負担の対象とする。
 精密聴覚検査について
(1)  実施機関
 以下の条件を満たす医療機関を県が指定。
[1] (社)日本耳鼻咽喉科学会の認定専門医がいること
[2] 乳幼児の聴覚障害の聴覚検査機器(ABRなど)があること
[3] (社)日本耳鼻咽喉科学会の推薦があること
(2)  実施方法
 精密検査実施機関が行い、必要に応じて、関連臨床科(小児科、新生児科など)の専門医との密接な連携のもとに行う。検診は、ABRを中心に行い、必要に応じて行動反応聴力検査(BOA)をあわせて行う。
(3)  実施時期
 生後6か月以内に療育が開始できるように、生後3か月目くらいまでの確定診断を目標として検査スケジュールを立てる。両親の不安が強い場合、不安解消の希望があった場合には、直ちにカウンセリングが可能な療育機関を紹介する。
(4)  結果とその対応
 精密検査で、聴覚障害を認めたもの、疑いがあるものは、療育機関である難聴幼児通園施設「岡山かなりや学園」でさらに詳細な聴力検査を受けるように指示し、紹介する。
 療育について
(1)  初期介入のスケジュール
[1]  聴覚の評価
 医学的管理と処置
 ABR、BOA、条件詮索反応検査(COR)、耳音響放射(OAE)、ティンパノメトリーなどを組み合わせて、早期に聴覚障害の種類と程度を確定する。
[2]  補聴器の選択とフィッティング
 可能であれば両耳装用、イヤーレベル(耳掛形か挿耳形)でフィッティングする。
 矯正閾値と聴性反応の観察により再調整を繰り返す。
 装用指導 ・イヤモールドの作成と調整
[3]  両親へのカウンセリング
 障害受容のためのカウンセリング ・難聴の種類、程度、原因に関する説明
 将来の学校、就職に関する情報の提供
 実際の指導の見学や他の家族との関わりの場の提供
 家庭環境を知り、適切なアドバイスを実施
(2)  乳児期における指導スケジュール
[1]  指導:個人指導(週1日以上)、グループ指導(週1日以上)、母親指導(週1回以上)、ビデオ指導(月1回以上)、両親講座(年6回以上)、家族参観日(年1回、随時)、家庭訪問(年1回)、行事(年6回以上)、家庭指導(月1回チェック)
[2]  聴覚の評価(週1回以上、随時)
[3]  医学的評価(年5回、随時)
[4]  ケース会議(月1回)
[5]  補聴器の評価(月1回以上、随時)
[6]  達成度評価(年5回以上、随時)
[7]  発達評価(年3回以上、随時)
 関係機関の役割
(1)  県(本庁)
[1]  協議会の設置
【構成】  学識経験者、関係医師会、医療機関、保健所、児童相談所、市町村、療育機関関係者、福祉関係者、教育関係者
【業務】  聴覚検査・精密検査の実施体制の検討、診断確定後の療育に関する実施体制の検討、事業の手引き及び事業実施の問題点等
[2]  現状の把握
 新生児の聴覚スクリーニングのできる医療機関
 外来検査としての新生児聴覚スクリーニングを受け入れることのできる医療機関
 乳幼児の聴覚精密検査のできる医療機関
 聴覚障害をもつ乳幼児の療育機関とその療育内容
[3]  事業の手引きの作成
 新生児の聴覚検査にかかる基本的知識
 検査の実際(初回検査、確認検査、再検査、精密検査)・保護者への説明、相談等について
 検査後のフォロー体制・各関係機関の連携の取り方・専門医療機関、療育機関等のリスト
[4]  普及・啓発
 市町村の協力を得て、母親学級、両親学級等の場を利用して、本検査の趣旨等について周知
[5]  関係者への研修の実施
【方法】  検査実施の手引きをもとに研修を実施
【対象】  医療関係者(産婦人科、小児科、耳鼻科)、保健所・市町村職員、保育関係者、療育関係者
[6]  検査の実績等データの把握・分析
 検査の実績、その後のフォロー状況について把握・協議会で分析して問題の解決を図る
[7]  療育体制の整備
 福祉・教育等の関係機関と連携し、人材の育成等療育体制の整備に努める
(2)  保健所
 要再検となった保護者の不安が大きい時には、主治医と連絡を取り、個別の援助を行う。
 聴覚障害児に対して、主治医・療育機関との連携のもと、日常の育児の相談、保育、療育について、保護者の相談に応じる。
 福祉制度の紹介など、福祉関係者と連携しながら援助する。
(3)  市町村
 乳幼児健診等の充実
 
 
   本県の新生児聴覚検査の現状
    (1)  機器整備の状況
       平成13年9月に、自動聴性脳幹反応検査(AABR)又は耳音響放射検査(OAE)を実施できる医療機関及び検査機器の購入予定について、各健康福祉センター(保健所)を通じて調査した結果は、以下のとおりであった。
 
健康福
祉セン
ター名
自動聴性脳幹反応検査(AABR)配置医療機関 耳音響放射検査(OAE)配置医療機関
すでに有り 平成 13
年度購入
予定
平成14年度
以降購入予
すでに有り 平成 13
年度購入
予定
平成14年度
以降購入予
岩国 玉田産婦人科 岩国病院(産科)
柳井
徳山 賀屋小児科 みちがみ産婦人科
前田耳鼻科
坂本耳鼻科
防府 県立中央病院(耳鼻科) 大内クリニック(産科)
山口 ののはなクリニック
(耳鼻科)
山口赤十字病院(耳鼻科)
伊藤耳鼻科
ののはなクリニック
宇部 山口大学病院
(耳鼻科)
山口大学病院(耳鼻科)
はしもと産婦人科
11
豊浦 町立病院(小児科)
長門
都志見病院(産科)
下関 藤野産婦人科
合計 8施設 1施設 20施設 10施設 21施設
 
    (2)  新生児聴覚検査の実施状況
       平成14年2月に、自動聴性脳幹反応検査(AABR)又は耳音響放射検査(OAE)を実施している医療機関(16施設)に対し、機器の種類、検査担当者、検査対象、検査実績等について、各健康福祉センター(保健所)を通じて調査し、12施設から回答があった結果は、以下のとおりであった。
 
      検査実績
NO 機器 検査実績 異常なし 確認検査 (再)確認検査後経過観察
AABR OAE 実数 実数 実数
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
1
1
1
1
1
1



1


1
1
1
1
1
1
809
460
253
40
10
5
524
354
310
300
200
40
775
460
251
35
10
4
484
283
285
300
199
40
95.8
100.0
99.2
87.5
100.0
80.0
92.4
80.0
92.0
100.0
99.5
100.0
34
0
2
5
0
1
40
71
25
0
1
0
4.2
0.0
0.8
12.5
0.0
20.0
7.6
20.0
8.0
0.0
0.5
0.0
2
0
1
5
0
1
0
4
0
0
0
0
0.2
0.0
0.4
12.5
0.0
20.0
0.0
1.1
0.0
0.0
0.0
0.0
合計(平均) 6 7 3,305 3,126 94.6 179 5.4 13 0.4
 
    (3)  新生児聴覚検査の実際
       産婦人科の外来にて、ポスター掲示あるいはリーフレットを保護者に手渡し、分娩後に再度説明を加えて検査の申し込みを受け付けている。
    〈リーフレットの例示〉
 
赤ちゃんの聴覚検査についてのお知らせ
 
 生まれつき耳が聞こえない、または聞こえにくいという障害を持つ子どもは、
     出生1,000人中に1〜2人の割合で生まれます。
 国内で毎年、約1,000〜2,000人の聴覚障害児が生まれていることになります。
     耳が聞こえないと言葉を覚えることができません。
 しかし、できるだけ早い時期に障害を見つけて治療や訓練を始めることで、
    その言葉の発達のハンディを最小限に抑えることができます。
 
 今まで赤ちゃんの聴覚障害はなかなか診断することができませんでしたが、
最近、新生児期の検査のための装置が新しく作られて、当院にも導入されました。
 検査は3〜5分間で終わり、赤ちゃんには痛みも苦痛もありません。
ただ検査には赤ちゃんが眠っていることが必要なので、入院中に行うのが最適です。
 
この検査は保険適応になっていません。お母様方のご希望に従って検査を行います。
 費用は、○○○円です。
 分娩後にまたご説明します。
□□□産婦人科
 
    (4)  精密検査機関の状況
       平成13年12月に、新生児聴覚検査後の精密検査機関について、日本耳鼻咽喉科学会山口県地方部会が調査した結果、県内に以下の16機関が精密検査を実施していることが判明した。
 
     
病院名(順不同) 医長(専門医)(敬称略)
山口県立中央病院 平田哲康
社会保険徳山中央病院 遠藤史郎
下関市立中央病院 辻 剛二
国立下関病院 奥園達也
山口日赤病院 久 和孝
済生会山口病院 金谷浩一郎
同仁会周南記念病院 田村光司
厚生連小郡第一総合病院 増満洋一
厚生連長門総合病院 蓮池耕二
美祢市立病院 松田嘉子
小野田市立病院 田原哲也
厚生連周東総合病院 西川益利
国立岩国病院 隅田伸二
都志見病院 岡崎英紀
済生会下関総合病院 小野信周
山口大学耳鼻咽喉科 三浦正子
 
    (5)  聴能訓練施設の状況
       平成13年12月に、精密検査後の聴能訓練施設について、日本耳鼻咽喉科学会山口県地方部会が調査した結果、県内に以下の5機関がBOA、COR、ピープショウテスト、遊戯聴力検査といった検査を行い、補聴器フィッティングや聴能訓練を実施していることが判明した。
   
施設名(順不同) 担当医師、教諭 担当言語聴覚士(ST) 補聴器フィ
ッティング
聴力検査
山口県立ろう学校 国広弘美教諭
米沢砂千子教諭
古岡文子教諭
原田育子教諭
長岡優子教諭
山本規子教諭
田中幸雄教諭

可能
BOA、COR、
ピープショウテスト、
遊戯聴力検査
山口県立ろう学校
下関分校
岡 直美教諭 森本邦雄教諭 可能

BOA、COR、
ピープショウテスト、
遊戯聴力検査

ののはなクリニック 兼定啓子医師 山根以久子ST
溝部喜代美ST
大名千恵子ST
可能 BOA、COR、
ピープショウテスト、
遊戯聴力検査、AABR
都志見病院 岡崎英紀医師 西村孝雄ST 可能 ピープショウテスト、AABR
山口大学耳鼻咽喉科 三浦正子医師 中津愛子ST 可能 BOA、COR、
ピープショウテスト、
遊戯聴力検査、DPOAE、
TEOAE 、AABR
 

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